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IR資料を活用したコンテンツマーケティング分析事例(生活110番)

最終更新: 2019年5月19日




今回はIRを活用したウェブサイトのコンテンツマーケティング分析事例をご紹介したいと思います。


私のリサーチ活動のメインはSEO対策領域ですが、それらに関連して新規のウェブ事業の立ち上げ支援やそれに伴う分析活動なども行っています。


今回ご紹介するのは、コンテンツマーケティングでサイトのパフォーマンスを約2年で100倍に押し上げたシェアリングテクノロジー社が運営する「生活110番です。



事例紹介の前に、分析対象サイトを運営しているシェアリングテクノロジー社について

概略を押さえておきましょう。


緊急駆けつけ系のポータルサイトを運営する同社は、第12期である2018年9月決算でグループ連結売上47億2,700万円、当期利益5億3,900万円という業容で成長を続けており、2017年8月には東証マザーズに上場も果たしている、更なる成長が楽しみな企業です。



ビジネスモデルとしては「B to B to C」で、一般ユーザーのお困りごと(水漏れ、カギ開け、お掃除、害虫駆除など)に対して、対応可能な業者をマッチンクするサービスを展開しています。提携業者は全国に2,900社、一日に2,700件に対応しています。


このビジネスモデルを支えているのは、メインサイトである「生活110番」を始め、200件のバーティカルサイトです。 バーティカルサイトとは、直訳すると「垂直型のサイト(メディア)」で、提供サービスごとに専門サイトを切り分けて運営する形態で、サイトのブランディング性、テーマ性を高めて「特化型サイト」を運営することができます。


また、サービス分野別のターゲットkw群に対して、ユーザーの検索エンジン経由訪問を最適化させるというSEO上の狙いもあると思われます。それぞれのサイトテーマに沿ったコンテンツを集中的に投入することで、グロース確率を高めていると言えるでしょう。


発展形態としてはバーティカルサイトの拡充を先行させ、ある程度、グロースモデルを確立させたうえで、メインサイトの投入という流れをたどっています。







web解析ツール「ahrefs」のデータから推測すると、今回のリサーチ対象の「生活110番」は2016年1月ごろから徐々に稼働を開始し、少なくとも運営期間は現時点(2019.5.1)で3年4ヵ月を経過しているものと考えます。


2018.6.30  325,153セッション(ahrefs) → 170万pv(IRより)

2019.5.1   940,762セッション(ahrefs) → 491万pv(推定)


ahrefsとIRの内容を組み合わせて考えてみると、上記の通りになります。

セッション数に関しては、ahrefs値と実数にしばしば乖離が見られますが、経験的にはahrefs値×2~2.5に補正すると実数に近い数値になるかと思います。

それらを考慮すると、流入セッション数は既に200万前後までグロースしている可能性があります。


サイトを立ち上げて3年程で上記のパフォーマンスを達成していることから、コンテンツマーケティングという視点では、一定の成功を収めていると言えるのではないでしょうか。




上記のグラフをご覧ください。


Googleがこの間、大規模な数度のアップデートを行ったにも関わらず、ほぼネガティブな影響を受けることなく、順調にトラフィック数、kw数を伸ばしています。


ご存じのとおり、YMYL(your money your life)領域に該当するコンテンツマーケティングサイト、とりわけ低品質な「キュレーションメディア」、「アフィリエイトメディア」は、相当数がGoogleの自動フィルタリングや手動対策で検索結果から排除されてきました。


にも関わらず、[生活110番」がアップデートごとにサイトのパフォーマンスをグロースさせているのは。しっかりした戦略をもとにサイトとしての配信品質と情報品質を、一定のレベルで保っているからではないでしょうか。



以降は分析例のご紹介もかねて2つの問いを立て、それぞれに結論を求めることで、シェアリングテクノロジー社としてのサイトグロース戦略の一端に触れてみたいと思います。



【問い その1】

シェアリングテクノロジー社は、コンテンツマーケティングに関して、今後どの様な戦略・方針を打ち出しているのか?



2018年9月期・第3Qの同社決算説明資料に記載されている各KPI数値を分解する。


https://www.sharing-tech.jp/ir/pdf/2018_3q/presentation.pdf



まず、2018年7月の月間問い合わせ件数(推測)から年間の問い合わせ件数を算出。

1日平均問い合わせ数 2,700 件 営業日数 31日


月間問い合わせ数 83,700件

3Q(9ケ月予想累計) 753,300 件

年間予想累計 1,004,400 件


「生活110番」は年間100万件以上の問い合わせを受けている様だ。

ライティング投資に関して詳細な内容が開示されていたので、記事作成単価や、記事から年間でどの程度の売り上げが発生しているのか?割り出してみる。




追加1記事あたり作成単価

①/② 74,462円 (本体とバーティカルの記事作成のレベルに違いがないと仮定)





※1記事あたりの売上予算は現在の1記事予算と仮定することが可能ではないか?



※2 公開済記事 年間売上予算 × 9/12ヵ月(按分計算)にて導き出される

3Q予想売上累計は484,314,600円





【結論】

シェアリングテクノロジー社の2018年9月期ライティング投資予算4億8,400万円は、上記の計算過程から類推するに、3Q までのコンテンツマーケティング売上とほぼ同額だといえる。


売上予算をそのまま投資予算に再投資するという判断から類推すると、同社のコンテンツマーケティングは一定の成功を収めていると考えられ、今後もこの分野への投資を加速化してゆくことが考えられる。


(補足)

また、目指すべきコンテンツ品質と投資という意味では、同社が1記事あたり投資金額である74,462円という金額は、他事例と比較しても非常にバランスの取れた現実的な数字であり、8~10カ月で投資を回収できるというのは、クロース性の観点から見ても大きな魅力である。今後、他事例の分析や投資判断の参考としたい。




【問い その2】

仮に駆けつけサービスの売上単価(従量課金とした場合)を15,000円とした場合、PPC広告の投入上限CPAはどのぐらいが妥当なのか?

  

コンテンツマーケティングが軌道に乗るまでは、PPC広告などで流入を確保する必要があるが、想定する売り上げ単価に対してどの程度の広告費用を投資するのが妥当なのか?算出してみる。



WEB事業

3Q累積売上 2,013,000,000 円

問い合わせ3Q(9ケ月予想累計) 753,300 件

1問い合わせ売上単価 2,672円(PPC+記事)




【結論】

仮に新規サイトの売上単価(従量課金とした場合)を15,000円とすると、その60%の9,000円がPPCのCPA目安となる。

更に全体にCPAを抑えるためには10カ月程度の投資回収目標の記事作成投資が必要

(記事は投資回収後が見えない資産となるため、その後のメンテナンス費以外には大きく経費構造には基本的には影響しない)



決算資料は決算書の損益計算書や貸借対照表を読み解くための簿記の知識なども必要なく

丹念に分解することで、かなり正確にKPIを算出することが可能です。


また、開示している内容が詳しければ詳しいほど、決算内容や投資戦略に積極的な姿勢も垣間見れます。


機会があれば、色々な会社の決算資料を気軽に分析してみてはいかがでしょうか?

思わぬ知見、示唆が得られるかもしれません。








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